ドクターKのこだわりコレクションをご紹介します。
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カペーは前世紀初頭に活躍したフランスのカルテットである。比類ない芸術的高みにあった20世紀最高の弦楽四重奏団との誉れが高い。
カペーが残した録音は12曲のみである。写真のCDセット「カペー四重奏団の芸術」にその遺産が集大成されている。中でも特にベートーベンの5曲の弦楽四重奏曲が白眉である。
いささか古い録音であることは否めないが、SPのスクラッチ音の彼方から聞こえてくる音楽は驚くほどモダンである。ポルタメントを多用した同時期のレナーとは一線を画す。テンポはゆったりとしており一聴するとか細く聞こえるが、よく耳を澄ませると実は弾力に富み、強靭な演奏であることがわかる。整然とした形式美と作品の本質に迫る鋭い洞察を兼ね備えている。
「野村あらえびす」先生が戦前に書かれた古典的名著である「名曲決定版」を引用させていただく。「実に驚くべきはカペエ四重奏団である。単にその技巧の精錬や、均整などは問題ではない。カペエ四重奏団の4人のアーティストが、渾然として有機的に結合した、一つの大天才であるといってもいい。その芸術的な高度の燃焼は、僅かに室内楽団としてはカザルス・トリオをもって比較し得るだけであろう。カペエの演奏には天衣無縫という形容詞がそのまま当てはまるような気がする。そのレコードのすべてが、完璧的な傑作で、一つ一つが、燦として輝く。」
この文を読み、誰がカペーに無関心でいられよう。私も渡米直前に「カペー四重奏団の芸術」が発売された当日、仕事帰りに閉店間際のレコード店に駆けつけた。家に帰り、夢中で全曲を聴き通した。もちろん当時はインターネットなどはなかった。長年求めていたカペーとの出会いであった。期待を裏切らない演奏だった。その後、敗戦色濃い大戦末期に「戦地に向かう前に一度だけカペエの演奏を聴きたい」と願っていたという日本人兵士の逸話を何かの雑誌で目にした。自分が恵まれた時代に生を得たことに対して、深く感謝せずにはいられなかった。
真に偉大な演奏は時代や録音の酷しさを超えて、人の心を打つものである。
Dr K
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日々の外来診療の傍ら、周囲の目に隠れて密かに集めたこだわりのコレクション。未視聴、未読のCD、DVD、本の山に囲まれながら、人生の残り時間を考える毎日。
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