ドクターKのこだわりコレクションをご紹介します。
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最近追加したコレクションで最大の収穫といえるのがこの赤箱。長いことネットで探し回っていた代物。カナダの通販ショップで新品を偶然見つけ即購入した。すでに廃盤となった極めて貴重なアイテムで、その価値を知る者が容易に手放すとも考えにくく、中古市場に出回ることもまずないと思われる逸品である。
これはポーランド出身のハープシコード奏者のワンダ・ランドフスカの掛け替えのない遺産。1928年から1940年にわたる戦前ヨーロッパでのすべてのスタジオ録音を集大成した8枚組のCD箱。発売元のUnited Archives社は、過去の演奏家達のすでに廃盤となった幻の名盤を極上の音で次々と復刻させ、マニアを喜ばせていたレーベル。ところがCD不況の波には勝てず、惜しくも2008年に廃業に追い込まれた。因みに、United Archives社により復刻されたCDはいずれもマニア垂涎の貴重盤ばかりで、中でもこのランドフスカの名演の復活は最大の業績とされていた。
ランドフスカは19世紀始めより忘れ去られていたハープシコードという楽器を20世紀に復活させ、その普及に尽くした女性音楽家。ハープシコードを主役に据える作品はせいぜいバッハの時代までで、ベートーヴェンの時代以降は見向きもされなくなっていた。ピアノと違い音のダイナミックスを表現しにくいというのがその理由。
20世紀前半のSP録音であるにも拘らず、United Archivesの見事な復刻技術により、絶頂期のランドフスカの極上の名演を堪能できる。自ら制作に携わった特製ハープシコードを用い、時に典雅に、時に壮麗に、時に躍動的にと、各作品を雄弁な語り口で弾き分ける。特にクープランのクラヴザン曲集はランドフスカの最高傑作。その典雅な趣き、洒脱な語り口は絶品といって良い。
1939年、ナチスの台頭による身の危険を感じたランドフスカはアメリカに移住することを決意し、新天地で演奏活動を続ける。それ以降の演奏の記録はRCAレーベルに残されている。有名なバッハの平均率クラビーア集やゴルドベルグ変奏曲なども含まれている(写真上)。すでにその経歴のピークを過ぎているにも拘らず、そこで聴かれる演奏はとても若々しくモダンなもので驚かされる。その後のグレン・グールドのピアノ演奏と比較してみるのも一興。
ランドフスカの演奏の映像も残されている(写真上)。骨と皮だけのひどく痩せた手指は一見柔弱に見えるが、一旦演奏を始めると驚くほど力強く、溌剌とハープシコードを奏でる。彼女自身が自らの音楽遍歴やそのエピソード、バッハ作品の演奏のあり方などを語っている場面もあり、とても興味深い。
Dr K
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開業医
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日々の外来診療の傍ら、周囲の目に隠れて密かに集めたこだわりのコレクション。未視聴、未読のCD、DVD、本の山に囲まれながら、人生の残り時間を考える毎日。
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