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ドクターKのこだわりコレクションをご紹介します。

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エマーソン四重奏団によるベートーベンの弦楽四重奏曲全集を購入した。新装パッケージで再発されたもので、価格もお手頃な廉価版セット。

正直なところ、購入前はその演奏にあまり期待していなかった。エマーソン四重奏団といえば、無類のテクニシャンのカルテット。まさに「機能的」という表現がぴったりの現代的な弦楽四重奏団。バルトークやショスタコビッチといった20世紀の作品が得意という印象を持っていた。以前住んでいたオハイオ州のシンシナチで実演にも接したことがあり、その超絶技巧に驚愕した記憶が残っている。そのため、ベートーベンなどの古典派作品にはあまり向いてはいないのかなと勝手に想像していた。

ところが、これが意外にいいのである。ラズモフスキー3部作などの比較的ポピュラーな中期の作品は勿論、深い精神性を内包する後期諸作品についても、テクニックばかりではない真摯で流麗な演奏をしており、期せずして感銘を受けた。ジュリアード四重奏団の旧全集を初めて聞いた時にも同じような印象を受けた記憶がある。マン、ヒリアー、コーエン、アダムという強者を揃えた絶頂期のジュリアード。ブダペストやバリリの演奏を聞き慣れていた耳に、完璧なテクニックと適度な歌心を兼ね揃えた新即物主義の旗手、ジュリアードカルテットの演奏は誠に新鮮に聞こえた。

そもそもベートーベンの後期弦楽四重奏曲はそのすべてが圧倒的な名曲。ベートーベンがその波乱に満ちた生涯の最後の到達した前人未踏の深淵の境地。5曲すべてに崇高さが満ち溢れている。人類の至宝である。日頃は様々なクラシック曲を仕事の傍らで聞き流している自分にとっても、ベートーベンの後期弦楽四重奏曲は、バッハのいくつかの宗教曲とともに、手を休め、襟元を正して拝聴する特別な音楽である。

私にとって、購入したCDの価値の判断は、またその演奏を聴きたくなるかどうかが目安。たとえ世間で名盤として通っているCDであろうとも、自分がもう一度聴きたいと思えなければ、私にとっては並盤でしかない。数多く蒐集しているベートーベンの弦楽四重奏曲全集の中にも、購入以来まだ一度しか通聴していないものも少なくない(スメタナ新全集とか)。このエマーソンの演奏は今の自分の嗜好には合っているようで、ここしばらくは手にする機会が少なからずありそう。

Dr K
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ベートーベンの「英雄」は名曲である。私の最愛の曲の1つ。古今東西、数知れぬ録音があり、多くの名演が残されている。ベートーベンのオリジナルスコアを忠実に再現した演奏から、思い入れたっぷりに感情を移入した超ロマン的な演奏まで枚挙に暇がない。

「英雄」は交響曲(シンフォニー)の概念を根底から覆した革命的な曲。従来の交響曲とは宮廷やサロンで王族や貴族の「娯楽」のために演奏されるものだったが、ベートーベンはこの「英雄」でそうしたウィーンの伝統から「交響曲」を解放した。彼の旺盛な表現意欲が、既成概念の枠をつき破った。鮮やかな動機の提示とその展開をきかせる第一楽章、第二楽章の葬送行進曲とつづく第三楽章のスケルツュオのとの絶妙な対比、そして低弦による主題のうえに壮麗な音世界が構築されるフィナーレと、まさに「英雄」の名にふさわしい傑作である。

「英雄」は当初ナポレオンに献呈される目的で作曲されいたが、ナポレオンの皇帝即位の報に接したベートーベンは激怒し、献辞を抹消してしまった。激しい気性の理想主義者ベートーベンならではのエピソードである。

この革命的な交響曲の初演の時、聴衆の反応はいかなるものであっただろう。全編50分近い巨大な曲、娯楽とはほど遠く、激しく魂を揺さぶる未曾有の音楽を初めて耳にした聴衆の戸惑いが目に浮かぶ。そんな初演の様子を再現した映像がある。イギリスBBC作成の「Eroica」という映画(写真上)。

出演者は皆イギリス人であり、話す言葉もブリティッシュ英語、またストーリーもいかにもフィクションという感じだが、クラシックファンにとって非常に興味深い内容である。何よりも映画の中で「英雄」を演奏しているのが、ガーディナー指揮、オルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティク。数々のレコード賞に輝いた彼のベートーベン演奏が再現されている。オリジナル楽器の長所が最大限にいかされている。




一方、モダン楽器を使用したフルオーケストラの演奏の映像でお勧めなのは、カラヤン指揮ベルリンフィル、1982年ベルリンでのライブ。オーケストラ創立100年を記念して行われた演奏会の録音。この演奏はとにかく凄い!

当時、確かカラヤンとベルリンフィルは、楽団創設以来初めての女性(ザビーネマイヤー)の入団をめぐって確執があったはず。だが、ひとたび演奏会を迎えてしまうとそんな確執も関係無し。当時のベルリンフィルはそれぞれの楽器のスタープレーヤーが勢揃いでその頂点にあった頃。強者どもがカラヤンと激しいバトルを繰り広げる。なかでもコントラバス首席のウィットの演奏に注目。一部マニアの間では「コントラバスきのこ」と呼ばれている人。こんな熾烈きわまるベースの演奏みたことない。「カラヤンの演奏は表面的に磨かれているが中身に乏しい」という人、この演奏を観ればその先入観が変わるに違いない。私にとり、CDとDVDを含めて現時点での「英雄」の最高の演奏がこれである。

カラヤンの「英雄」は他にも多数発売されているので、くれぐれも間違いのないように。上の写真のカバーのDVDですよ。

Dr K



名盤の誉れ高きモントゥーの「英雄」をようやく入手した。

1962年、アムステルダムコンセルトヘボー管弦楽団とのスタジオ録音。1875年生まれのモントゥーは当時87才(!)で最晩年の録音。しかしこの演奏には老いが全く感じられない。

モントゥーといえば、ラベルの「ダフニスとクロエ」やストラビンスキーの「春の祭典」を初演(!)した指揮者。フランスものやバレエ音楽などが得意という印象があるが、必ずしもそればかりではなく、ベートーベンなどのドイツ系音楽でも多くの名演を残している。いくつか映像も残されているが、小柄でいかにも好爺という感じで世界中のファンから愛されていた。当地のサンフランシスコ響で音楽監督をしていた時期もあり、「幻想交響曲」などの名盤がある。

このモントゥーの「英雄」はすべてが絶妙なバランス感覚で演じられている。各音がスコアに極めて忠実に再現されているが、それでいて快適な躍動感も失われておらず、曲全体の造形が見事で、豊かな味わいと風格にも事欠かない。例えば、第一楽章のコーダ途中のトランペットの処理。ワインガルトナー版を聞き慣れた耳からすると一瞬「あれ?」と思うが、力強さの不足した感じが全くしない。音楽彫琢の名人であったモントゥーの真価が発揮されている。

このCDには後半に第二楽章のリハーサル風景が録音されている。残念ながらフランス語なので何を言っているのかわからない。でもモントゥーの声はハリがあり溌剌とした若々しく、とても87才の老人とは思えない。

メンゲルベルグなどの起伏の激しいロマン主義的な解釈とは対極にある、純粋に曲本来の姿を導きだす自然体の演奏。極めて良い意味での中庸。これなら繰り返し聞いても飽きない。「英雄」という曲の素晴らしさが素直に伝わってくる。クライバー(パパ)のコンセルトヘボーの「英雄」とともに私の愛聴盤になりそう。

Dr K
私は、毎年誕生日を迎える頃、自分の「人間ドック」をしています。

生活習慣の改善を患者さんに指導すべき立場であるにも拘らず、恥ずかしながら、自ら運動不足による体重の増加が赤信号となっており、やはり心配なのはまずメタボ関係の検査。もう1つ、今年知命を迎えた日本人としてやはり胃ガンが気になるとろで、毎年この時期になると胃カメラ検査を「しています」。

ここで「受けています」ではないことにご注目。そう、私は自分で胃の検査を「しています」。意外に思う方がいらっしゃるかも知れませんが、鼻から挿入するタイプの内視鏡であれば可能です。胃カメラといえば「苦しい」「もう2度とやりたくない」というのが風評かと思いますが、経鼻胃カメラは違います。検査中の「ゲーッ」という嫌な反射がほとんどありません。

実は胃カメラも太さや孔の数の異なる計5本を収集していて、目的に応じて使い分けをしています。今回自分の検査に選んだのはEG-1840というタイプで、極細いカメラでありながら十字方向に頭を動かすことができます。

胃の消泡薬を飲み、左の鼻腔を麻酔薬で軽く麻痺させ、さあ検査スタート。



ほとんど違和感もなく鼻腔を通りのどへ。いつもはここで患者さんに「つばをごくっと飲んでください」といいますが、今日は自分でのどの力を抜いて「すっーと」と食道の入り口を通過。そのまま一気に胃の中へ。

前夜食べた食べ物が少し残っていましたが、まあまあの前処置。そのまま十二指腸の方に向かいます。昔の潰瘍の痕を確認し、今度は胃のチェック。胃の下の方は少し萎縮があるがこれは昔いたピロリ菌の名残り。その後ヘッドをアップにしてカメラを半回転、胃の上部が見えてきました。体上部の前の壁にいつもの小さなポリープを確認。その後、カメラを直線に伸ばして一度下に戻り、そのままヘッドをくるくる回しながら体部の全周をチェック。よかった。特に問題なし。

そのままカメラをゆっくり引きながら食道をチェック。こちらもOK。

鼻の穴を傷つけないようにゆっくりとカメラを引き抜き、無事終了。カメラが鼻に入ってからここまでおよそ4分弱。まあまあ、の出来でした。

物珍しそうに横で観ていた新しいスタッフも唖然としています。

本当に経鼻胃カメラは画期的。日本で行われている人間ドックでも胃バリウムがどんどん経鼻胃カメラに置き換えられているというのも頷けます。「胃が痛い」などの自覚症状があるならば、辛い検査でも我慢できるかもしれませんが、健康診断が目的ならできるだけ楽に検査を受けたいですよね。

Dr K



マイルスのアルバムの中で最も好きなのは「Miles Davis in Concert」。1964年2月、ニューヨークのリンカーンセンターでのライブ録音。以前は「My funny Valentine」と「Four & More」という2つのアルバムに分売されていたが、現在は当夜の演奏すべてが収録された「The Complete Concert 1964」にて入手することが可能。出演メンバーは、マイルスの他、ジョージ・コールマン、ハービー・ハンコック、ロン・カーター、トニー・ウィリアムズという顔ぶれ。司会者のイントロから始まり、コンサートの全貌を追体験することができる。

「In Concert」はマイルスのリリシズムが最高に発揮されたアルバム。中でもタイトル曲「My Funny Valentine」での彼のソロの美しさには思わず言葉を失うほど。繊細なプレイでありながら、同時に圧倒的な緊張感とスリリングさに満ちた極上の音楽。ここには、ライブにおけるマイルスの最良のソロ演奏が記録されているといっても過言ではない。




昨年、マイルスがColumbia(現在はSony)に録音したほぼすべて(Plugged Nickelの別録音が入っていない!)の音源(52のアルバムで、CD70枚プラスDVD1枚)が収録された「The Complete Columbia Album Collection」という巨大なボックスセットが発売された。各々のアルバムの初出時のオリジナルLPジャケットデザインが再現されており、まさにマイルスの最大の遺産と呼ぶにふさわしい豪華な内容になっている。

帝王マイルスのジャズ史上の偉業を辿ろうとするならば、彼のアルバムを発表された順に聴く必要がある。この偉大なミュージシャンは未知の可能性を求め、休むことなく新しいジャズ形態を追求してきた。機を見るに敏感なこの賢明な音楽家は、常に時代の先頭に立ち、その演奏スタイルを刻々と進化発展させ、ジャズ界全体の趨勢に多大な影響を与えてきた。このColumbiaのボックスと、それに先立つPrestige時代の全集を合わせると、マイルスの創造してきたジャズスタイルの変遷(実はこれがジャズ音楽界全体の動向そのもの)を鳥瞰することができる。

Dr K
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日々の外来診療の傍ら、周囲の目に隠れて密かに集めたこだわりのコレクション。未視聴、未読のCD、DVD、本の山に囲まれながら、人生の残り時間を考える毎日。
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