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ドクターKのこだわりコレクションをご紹介します。

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コルトレーンの「Stellar Regions」を手に入れた。
これでコルトレーンのインパルスのCDがすべて揃った。

どんなにアグレッシブな演奏なのかと、恐る恐るプレーヤーにかけてみた。

拍子が抜けた。まともな音楽だった。

この齢になると、音楽を聴いて少しでもメロディーラインが聞こえてこないと不安になってしまう。「Expression」でまだ感じられた凶暴性はここではほとんどなく、宗教音楽にも通じるような静寂さと美しさが漂っている。ただ表向き穏やかな演奏の裏には深い苦悩が秘められている気がする。

ファラオサンダースをのぞいた後期カルテット。コルトレーンはこの録音の5ヶ月後に亡くなってしまう。マイルスやビルエヴァンスとともに創造したモード形式を自らの手で破壊しフリージャズ路線を邁進、「Live in Japan」や「Live in Seattle」でフリージャズの最後の激烈な魂の叫びを聞かせたコルトレーン。厳しい克己と弛まぬ前進を続けてきたジャズの聖人はこの「Stellar Regions」や「Expression」の後、いったいどこに向かおうとしていたんだろう。 フリージャズをも超えようとしていたんだろうか。

Dr K
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ジャズの世界ではギターはマイナーな楽器という印象があるかもしれない。でもそれは偏った見方。モダンジャズギターの開祖チャーリー・クリスチャンの時代から数多くの名手が活躍してきた。その容貌からは想像できない強烈なスウィング感と小気味良いフレージングが売りのバーニー・ケッセル、オスカーピーターソントリオで唸る様なスウィングを聞かせてくれたハーブ・エリス、サムピックとオクターブ奏法を組み合わせたダイナミックな演奏で鳴らした驚異のテクニシャン、ウェス・モンゴメリーなど、私も気の向くままに聞き流している。中でも一番のお気に入りはタル・ファーロウ。

タルは50年代に絶頂期にあった伝説のギタリスト。たこ(オクトパス)と称された巨大な手と長い指を絡めるように駆使して、複雑なコード進行を難なくこなし、「スピード感がありながら精緻でしかも豪快」な演奏を聴かせた。Gibsonの専用モデルからホーンライクな深い音色を引き出し、数多くの名演を残した。

私がタルの演奏と出会ったのは大学時代。田舎のレコード屋で偶然見かけた「Tal」というシンプルな名前のCDを購入し、その重心の低い骨多なギターの音色とフレージングに興味を覚えた。CDをこ一つ一つ買い集め、気がつくと1998年に亡くなった彼の残した音楽遺産のほぼすべてを収集していた。

タルの最良の演奏記録は1956年、Ed Fuerstというニューヨークのジャズファンのアパートで私的録音された2枚のCDと、Verveレーベルに残された50年代のグループセッション(特にトリオ)のスタジオ録音。前者は「Complete 1956 Private」というタイトルで入手できる。後者は2004年にMosaic Recordから限定発売された「The complete Verve Tal Farlow concert band sessions(写真上)」という箱物でその全容が明らかにされた。このコンプリートセットは現在ではファン垂涎のレアアイテムとなり、中古市場で高価取引されている。



タルはノースカロライナの出身で、看板屋が本業だった。地方のクラブでスカウトされ、ニューヨークに進出、次第にジャズシーンの寵児となる。ところが彼は金銭欲や名誉欲とは無縁の人柄で、大都会での派手な活動でショーマン化されることに嫌気が差し、順風満帆なキャリアの途中で突然田舎に雲隠れしてしまう。やがて70年代に入り、世界のジャズファンの熱い要望に答え、コンサート会場での活動を再開。「引退」や「復帰」という言葉で自分の去就を語られることを嫌い、「自分はずっと演奏を続けていたんだ。」と朴訥に語るインタビューを含んだタルのドキュメンタリー映画「Talmage Falow(写真)」から、伝説のギタリストとしての名声からは推し量りがたい素朴でかつ誠実なタルの人柄を伺うことができる。

当クリニックの待合室で、深く逞しい音色のギターが奏でるジャズ音楽が流れていたら、それはきっとタル・ファーロウの演奏です。

Dr K
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ドクターK
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開業医
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コレクション
自己紹介:
日々の外来診療の傍ら、周囲の目に隠れて密かに集めたこだわりのコレクション。未視聴、未読のCD、DVD、本の山に囲まれながら、人生の残り時間を考える毎日。
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